柏市 柏の葉地域の中型バスL4自動運転試乗記
エルゴシーティング(株) 山田俊治

写真1 柏の葉キャンパス地域で使用された自動運転仕様の中型バス
本年1月中旬から、柏の葉キャンパス地域において、東京都市圏の公道では初の自動運転レベル4による運行が開始されたのを受けて2月に試乗を体験。次に半年後、車載センサーを始め、自動運転を支える装備に関する調査を踏まえて、再度試乗を試みたので、これらの印象を体験記として報告します。この特定自動運行は、つくばエクスプレス(TX)の柏の葉キャンパス駅と東京大学柏キャンパスを結ぶシャトルバス路線2.6kmの一部600mの区間、一日3往復の便で行われ、車両には「いすずエルガミオ」をベースとした自動運転仕様の中型バスが使用された。巡航速度は時速40km、28名が定員だった。
試乗した際、以下の二つがとくに印象に残った。
①自分の現在位置を正確に把握するのにどのような方法を用いているか
②信号機が緑の交差点の右左折の仕方が極めてスムーズで見事だった
本来なら、自動運転中に運行状態から所定の位置への完全停止に至る過程、逆に停止状態から発進して巡行運転に至る過程がどうなるかに興味があったが、シャトルバスだけに途中に停留所がなく、自動運行区間には1カ所しかない信号機による運行制御で供される機会に限定された。今回は、幸か不幸か往復共に信号機は緑で、こうした機会に恵まれなかったのは残念だった。

写真2 柏の葉キャンパス駅前の路面に描かれた走行ルート表示
ここで、試運転ルートを示す。

図1 自動運転の運行ルート(赤色標記部分が実証実験の対象区間)

図2 柏市(注)の柏の葉キャンパス駅から東京大学柏キャンパスを望む
試乗して印象に残ったポイントに関連して追加調査の結果、以下の三つの要素が、自動運転システムを支える基盤になっていると感じた。
1)周囲を死角なく見守る車載センサー・カメラ
実際に使用されたバスは、外観は馴染み深い中型バスだが、その中身は最新鋭のセンサーの塊だ。
LiDARレーザーセンサーは、レーダー光を周囲に照射し、その反射から物体の形や距離を正確に測定する。
加えて、前方の遠距離用、周囲の中距離・近距離用、ステレオカメラ、後方用など、合計10個以上のカメラを装備している。
2)自己位置を正確に把握するシステム
前出の①に関連して、柏の葉キャンパス駅前の路面に描かれた路面標示が目についた。
当初は、バスのセンサーがこの線を読み取って運行ルート認識の手段の一つとして機能するのかと考えたが、実際のシステムは筆者の想像を遥かに超えていた。
すなわち、GPSなどの電波を受信して自身の位置を把握し、これと予めつくられた高精度の電子地図とを照合し、さらにLiDARやカメラで捉えた周囲の景色とのマッチングを加味して、所定のルートを外れずに走っていたのだ。
3)車外とつながる路車連携の協調型システム
前出の②で触れた自動運転中の見事な右左折動作を支えるシステムについて調べたところ、車載センサーだけではなく、それを補足するような情報を路側機が捉えてリアルタイムでバスに送信する協調型システムがあることが分かった。その一環として、バスが信号交差点に近づいたときには、車載のカメラからの情報に加え、信号に合せて設置した路側機から青色信号の残秒数を取得し、進入中に信号が黄色に変わりそうなときは、早めに減速を開始して停車するといった動作も可能なシステムになっていたのだ。
上記の調査結果を踏まえて、去る7月、この自動運転バスに再度試乗してみたいと考え、現地を訪れた。東大柏キャンパスのシャトルバスの時刻表には前回と同じく自動運転バスの時刻も載っているにも拘わらず、自動運転の運行がされていないことを知って衝撃を受けた。当該自動運転の運行主体である「柏ITS推進協議会」の構成メンバーである柏市の担当部署に問い合わせたところ、本年3月31日をもって、プロジェクトが終了したためとのこと。
実証実験開始時点の資料を吟味すると、当該プロジェクトの実施期間が令和7年度末までとの記載があったが、後に柏市のHPの関連ページに載った「お知らせ」欄の表現は「4月1日以降当面の間自動運転の運行を休止いたします」であり、将来的な再開に含みをもたせている。しかしながら、担当部署から今後の見通しについての回答は得られなかった。
いまや運輸業界における運転手不足は深刻な問題であり、自動運転実用化への期待が大きい。今回の実証運行はレベル4だったが、完全自動化のレベル5に向けて、1日も早い新たな展開を望みたいものだ。
(注) 柏市の概要:千葉県北西部に位置する人口約44万人の中核市。東京都心から約30km。JR常磐線、つくばエクスプレスにて1時間以内のアクセス距離。
参考資料
・柏市:「柏市における自動運転の取り組み」、https://www.city.kashiwa.lg.jp(柏市公式ホー
ムページ)
(本件についての該当ページは、当該ホームページトップの止部|こある検索欄に「柚市にお
ける自動運転の取り組み」などと入力し検索して探し出す)
筆者(山田俊治さん)のプロフィール
1962年、東京大学工学部応用物理学科(計測工学専修)卒業。
1967年、ケース工科大学(現ケース・ウエスタンリザーブ大学)修士。
1962年、東洋高圧工業株式会社(現三井化学株式会社)に入社。
1994年、株式会社山武(現アズビル株式会社)に入社。
2003年よりエルゴシーティング株式会社技術顧問。

資料 柏市における自動運転の取り組み(柏市HP)
・図1 自動運転の運行ルート(赤色標記部分が実証実験の対象区間)
・図2 柏市(注)の柏の葉キャンパス駅から東京大学柏キャンパスを望む
(注)柏市の概要:千葉県北西部に位置する人口約44万人の中核市。東京都心から約30km。JR常磐線、つくばエクスプレスにて1時間以内のアクセス距離。
②、③ 現状のもので結構かと思います。
④ 柏市:(注)柏市の概要:千葉県北西部に位置する人口約44万人の中核市。東京都心から約30km。JR常磐線、つくばエクスプレスにて1時間以内のアクセス距離。