背当てを作る
2014.6.14
エルゴシーティングと早大野呂研の研究は、長い間座面に集中しておりました。しかし2012年からの研究や開発では、背当てについても行っております。その研究と開発品の特徴は、
ダブルランバーサポート
座面との連続性
頸椎の過伸展防止のヘッドレスト
子供を守る
といったことになります。 いずれも整形医豊田耕一郎先生や東北大医工学研究科小山秀紀准教授との共同研究の形でのユニークなアプローチです。以下に断片的ですが、開発の過程の一部を紹介します。
1.デザイン
図1は、四日市 市立博物館スペースポートのための椅子のデザインです。劇場用の椅子ですが通常無視されがちな児童のからだを配慮したものとなっております。とくに頸部の過伸展の障害を防止する機構がデザイン時から組み込まれております。なお、児童は小学4年生をモデルにしております。
図1 子供を守る背当てのために 子供と大人の体型を考慮してデザイン
図1をもとにデザイナー余氏に描いてもらいました。
図2 子供を守る機構を組み込んだ椅子 デザイン 余 筱嘉
2. 背当て作りの第一段階
背当ての開発の第一段階は、木箱の上に、クッションなど載せて目的に合うか試すことから始めます。 写真1は、高山の生活技術研究所での試作の様子です。
写真1 背当ての開発の第一段階 モックアップ
生活技術研究所は、背当てについて詳しい研究を数年行っております。
藤巻吾朗:人間工学的手法による木製椅子の快適性評価と機能設計に関する研究 第16報 岐阜県生活技術研究所研究報告、No.10 pp12-19 2007
これは、余談ですがミュンヘンの大学のデザイン学科のクラスの講義風景を写真2に紹介します。
写真2 University of Applied Sciences、Munich でのデザイン学科での講義
この写真の椅子は、写真1と同じものを向こうの学生たちによって作ったものです。
3. 医学×工学による背当て作り
背当ては、ヒトの背骨と対応しております。言い換えれば、脊柱を支え、保護する役割を背当ては持っております。そこで、整形医による協力は欠かせません。
写真3は四日市スペースポートのための椅子の試作品(コトブキシーティング製作)です。
写真3 四日市スペースポートのための椅子の試作品
写真4は、骨盤の傾斜を測定しているところです。
写真4 骨盤の傾斜角度の測定 とよた整形外科クリニック レントゲン室
写真5は、豊田先生が、X線撮影の準備をしているところです。
写真5 コニカミノルタの最新デジタル低被ばくX線撮影装置で撮影
写真6は、画像の解析を行っているところです。
写真6 画像の解析の様子 手前の人物野呂 奥の人物豊田先生
このような医学×工学のアプローチは、いままでにない背当て作りでその成果が期待されます。
以上の開発の一部は、2014年3月のドイツ人間工学会GfA で報告した下記の論文から引用しました
Developing a prototype model of chairs for sky watchers in planetarium theaters
Kageyu NORO1, Hideki OYAMA2, Kouichiro TOYODA3 and Kensuke HIGASHIHARA
- 呼吸枕
- 医師用椅子(産医大版)の開発
- 取扱説明書
- 素材の特性から選ぶクッション
- 星観(プラネタリウム)椅子の開発
- 巻きずしロール
- 骨盤ざぶとん
- 仙骨サポート座布団
- 仙骨サポート座布団(SSZ)の効果の検証
- レストランの椅子
- 航空機用シート
- カーナビゲーション用リモコン
- アクセルとブレーキの踏み間違い 研究
- 講演ー実験と製品化人間工学 2017.7
- Ergonomics has an important role to play for supporting economic and industrial activities.
- ダイムラー社ベンツ最新Eクラスのエルゴノミクス体験
- 人間工学入門その1 何のためにあるのでしょうか
- その2 いつ頃から人間のことを考えてものを作るようになったのでしょう
- その3 参加型人間工学
- 講演 人間工学による物作り その1ー5つの鍵
- 講演 人間工学による物作り その2ー事例1キッチンナイフ
- 講演 人間工学による物作り その3ー事例2 椅子
- 講演と論文・記事
- 国家試験問題(人間工学関連)の傾向と対策
- 目次と趣旨
- 第1章 看護のためのエルゴノミクスとは
- 第1章 1.2 人間工学で必要な人体の知識 1.3 ICTの活用
- 第3章 看護師の動きを時間で測る
- 第4章 患者の満足を調べる
- 第5章 病室の患者のゆとりを測る
- 第6章 椅子・パソコンと健康障害
- 第7章 医療ミス